「オミクロン株」について(3)(2022年1月5日)

オミクロン株に関する暫定情報をアップデートします。

前回のアップデート(2021年12月8日)でははっきりしていなかった感染力や病原性について、少しづつ科学的なデータが報告されてきました。それに基づいてわかっていることをここで整理します。

まず感染拡大のスピードについてです。当初より、オミクロン株はデルタ株より感染を広げる力が強いことが疑われていましたが、一部の地域にみられる限定的な条件下でのみ見られる現象ではないか、という議論がありました。しかし、それ以降、南アフリカだけでなくイギリスやアメリカなど世界各国からの研究報告により、オミクロン株がデルタ株を遥かに凌ぐ感染力を持つことは確実とみられるようになっています。厚生労働省の新型コロナウイルス対策アドバイザリーボードは、デンマークでの感染事例を基に、オミクロン株の感染拡大速度はデルタ株の約4倍であることを報告しています。この資料に基づいて推測すると、日本国内で分離されるウイルス株は2022年1月末までに、ほぼ全てがオミクロン株に置き換わる可能性があります(あくまで可能性です)。

次にワクチンの効果についてです。最初に感染拡大に対するワクチンの予防効果についてまとめます。世界各地でオミクロン株が拡大しているわけですが、ワクチンが感染を予防する効果はあまりないと考えられています。ワクチンを2回接種している人はもとより、3回接種を完了している人もオミクロン株には感染しています。2回接種者について分析すると、ワクチン接種していない人が100人感染するような条件下で、80人程度が感染しているという報告があります。これは平たくいうと、(残念ながら)ワクチンを打っていても感染を防ぐ効果がほぼない、といって良いような状況です。ことオミクロン株に限って言うと、「ワクチンを打っているから自分は感染しない」という考えはまったく間違っています

一方、重症化率に対するワクチンの予防効果はどうでしょうか。現在のワクチンを接種していれば、オミクロン株に感染したときの入院率や重症化率、死亡率は下がる、という報告が多くあります。ワクチン接種に意味がないわけではなく、やはり重篤化を防ぐ効果はあるのです。まだ接種していない人は是非ワクチン接種を検討してください。

最後に病原性についてです。これほど感染力の強いウイルスが、これまで同様の病原性を持っていたら大変なことになると警戒されていました。しかし、これまでの報告を見る限り、これまで以上の重症化事例が頻繁に報告されるわけではありません。むしろ、オミクロン株はあまり重症化を引き起こさないのではないかという見解が優勢です。ただし、報告のある国ではワクチン接種が既にかなり進んでいて、ワクチン接種の影響が正確に切り分けられていません。つまり、ワクチン接種していない人にも軽い症状で済むのかは、まだわからない状況です。また、社会全体のことを考えると、オミクロン株による感染者数が第4波、第5波を超えて増加すれば、例え比較的少ない割合であっても重症者は増えていき、いつかは医療逼迫を招くことにつながります。重症化、死亡のリスクがゼロではない。この点には十分な注意が必要です。

まとめ

  1. オミクロン株は感染力が強く、これまで大丈夫だった状況下でも感染する、あるいは感染を広げる可能性があります。
  2. ワクチン接種をしたから感染しない、ということはありません。
  3. したがって、マスクや手洗い、手指消毒などの基本的感染対策は引き続き徹底してください。
  4. 病原性については、特に重症化しやすいという訳ではなく、過度に心配しなくても大丈夫です。ただしワクチン未接種の方、基礎疾患のある方が「重症化しない」と考える妥当性はありません。
  5. 基本的感染対策とワクチン接種により感染することを予防し、感染拡大を抑止することが重要です。